少し前の話になるが、エンターテイメント業界に関する勉強会に参加する機会を得た。

名前を挙げれば、誰もが知っている日本を代表するエンターテイメント企業のキーパーソンとも言える方。

勉強会は、さすがに、日本のエンタメシーンのど真ん中にいらっしゃる方なので、その話はとても生々しく、
現在のエンタメ業界がそのような状況なのか、韓流のシステム、その強さの秘密、また業界規模の推移を具体的な数字を挙げて説明してくださった他、ビジネスとしての細やかな分析や対応策など、門外漢の私でもすんなりと入ることができ、とても興味深い内容だった。

CDが売れなくなった、と言われて久しい。
「衰退産業」の音楽・エンタメ業界。

そこは、私が今属しているラジオ業界も、状況を同じくする。

しかし、お話を聞いている内に「これは、根本的な視点が違う」と、段々絶望的な気分になってきた。

同じ「衰退産業」でも、エンタメ業界は(もしかすると、氏の会社、氏の周辺だけなのかもしれないが)ちゃんと「外部」を見ている。外部を取り込み、その変化に対応しようとしている。仕掛けようとしている。

ところが、ラジオ業界はどうだ。
見ているのは内部ばかり。自分たちの足下しか見ていなくて、どこが聴取率や占有率が一位だとか、radikoは救世主だ、ビジネスチャンスだとか、全て内向きではないか。

ビジネスとして包括的に、業界全体を、また、社会との関連性を、俯瞰で捉えようという視点が全く感じられない。

さて。
では、ラジオマンはどうすべきか。

思い切って言ってしまえば、分からない。
簡単に答えは出ない。

ただ思う事は、「ラジオサイズに収まらない」ことの重要性だ。

ラジオはとても素晴らしいメディアであると思う。
大掛かりな装置や、空々しい演出が要らない事、聴取者が考える、入り込む余地がある事、巨額が絡むビジネスシステムではない分のフットワークの軽さ、そしてなにより、人に触れるメディアである。

ラジオは、人と人とをつなぐ。人と社会をつなぐ。
今、流行のSNSに比べて、個人的度合いと公共性のバランスが取れていて、体温が伝わって、人に触れる事ができるメディアなのである。

規模感がとても小さいスモールビジネスだが、人の心に直接なにかを届けることができる。

その素晴らしさに魅せられた人たちが、ラジオに集まる。ラジオマン達は、ラジオが、大好きだ。正直、対してギャラは良くないし、かっこ良くもない。でも、みんな、ラジオが大好きなんだ。

だからこそ、近視眼的な視点から抜け出せない。一歩外に出てみると、本当は、もっといろんなものが見えてきて、いろんな流れや空気や風や音を感じる事ができるはずだ。

もう一度言うが、私如きが、ラジオ業界に対して革命的な提言をするなんて、極めて困難な話だ。
もっと賢いビジネスマンや、コミュニケーションデザインのプロは山ほどいる。

ただ、ぼんやり思う事は、ラジオの訓練をしているだけでは、ラジオの一番にはなれない。

今は「ラジオサイズには収まらない」事をテーマに、これからのラジオの話を考えていきたい、と思う。